第75回昼食会&講演会 63名参加

日時:2014年11月26日(水) 12:00~14:30
会場:リーガロイヤルホテル大阪 2階 「桐の間」
講師:森 まゆみ さん(作家・エッセイスト)
主催:大阪日伊協会
演題:「即興詩人のイタリア」
協賛:ネスレネスプレッソ(株)

141126_012014年最後の大阪日伊協会主催の「第75回昼食会&講演会」がリーガロイヤルホテルで開かれました。
今回は、在大阪イタリア総領事館のマルコ・ロンバルディ総領事、そしてイタリア総領事館経済商務官の中谷陽子さんをはじめ63名の皆さんが参加し12時から始まりました。
和田省一会長の挨拶の後、森さんの講演が始まりました。
森さんは「一葉の四季」や「鴎外の坂」の著作で日本に多くの読者を持っています。大のイタリア好きで、森鴎外が9年を要して翻訳したアンデルセンの小説「即興詩人」の背景をなすイタリアをくまなく旅しています。その経験を綴った『「即興詩人」のイタリア』はイタリア紀行のガイドブックとしても興味深いものがあります。また、2014年には「青鞜の冒険で紫式部文学賞を受賞しています。

デンマーク人のアンデルセンが書いた「即興詩人」は、19世紀北欧やドイツにとって憧れの国であったイタリアを描いた小説で、主人公の成長小説でありアンデルセンが1830年にイタリアを旅した時に見た風景を書いた観光小説でもあると話されました。「即興詩人」の素晴らしさは、そこに書かれているものが今も同じ場所に存在していること。カラカラ浴場、コロッセウム、フォロロマーノ、パンテオン、ネロの宮殿、コロッセオ、ゲットー等が今でもそのまま見ることができることです。

この「即興詩人」を日本語に訳した森鴎外は、ドイツに留学した時にドイツ語訳で読み、帰国後9年を要して翻訳しました。即ち、書いたのはデンマーク人、読んだのはドイツ語、舞台はイタリア、文語体の素晴らしい訳文は日本語ということになります。
ほんの20年前までちょんまげに裃の日本であったのに「訳語」が工夫されており、どうしてこれほど西欧が理解できたのか感銘を受けられたそうです。たとえば、木犀草=レセダ、柑子=オレンジ、月桂=ラウレオなど鴎外の訳語には感心させられると話されました。
鴎外が「即興詩人」の訳に取り組んだのは、ドイツ留学時代に恋愛しその後別れた恋人を思って9年の歳月をかけて翻訳を完成させることができたのではないかと推測していました。

因みに、鴎外はドイツには3~4年留学していましましたがイタリアには一度も行っておらず、船でメッシーナ海峡を通っただけなのに正に実写に近い表現だと思うとのことでした。森さんは「即興詩人」の物語の舞台を4回旅していますが、いずれも春に訪れており、現地を訪ねる度に新しい発見があり、特に夜のイタリアは素晴らしいと力説されていました。
「即興詩人」の物語の素晴らしさとともにその当時描かれた場所が現実に存在し、アンデルセンが見たものをそのまま現在でも見ることができ、イタリアには遺跡をはじめ過去の物が現存することが素晴らしく歴史と文化が大切に保存されていると話されました。
また、森さんは都市の景観や歴史性を守る活動を続けており現在は、オリンピックに向けての新国立競技場の建設を再検討し、よりよい着地点をみつける活動を行っています。

講演の最後に、2020年のオリンピックを控え、巨大な新国立競技場を建てる必要があるのかを検討し環境保全を皆さんで考えてもらいたいと訴えていました。

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